生活習慣を予防する-定期健診

Home

定期検診の基準値・危険性・予防の必要性

◇検査結果を聞かないのも生活習慣病

医療機関は個人の症状の変化を記録して管理していますが、病気の重症化が判明しても腫瘍が見つかっても連絡してくれるほど親切ではありません。「検査結果が悪かったらお知らせくらいあるはず」と考えるのは間違いです。

一般的には「仕事が忙しくて通院できない」という場合が大半です。実際に仕事が忙しいと通院する時間はなかなか取れません。定期的に通院して自分の体の状態を把握できないという意味では、これも生活習慣病かもしれません。放っておけば進行していく病気ではあるけれど、どこが悪いのか判らないという状態では生活習慣を変えるのも困難です。実際にこのパターンが多くなっているのも事実です。

患者側の怠慢が原因なのか、医療を提供する側が予防医療に消極的なのかわかりませんが、結果的に国内で生活習慣病に罹っている人は、高血圧4,000万人、脂質異常症4,200万人、糖尿病890万人(糖尿病予備軍を含めると約2,000万人)という数に上っています。高血圧症も糖尿病も一度かかると一生治らない病気です。そして合併症は必ず出てきます。

◇突然死も考えられる生活習慣病

死の四重奏とも言われる生活習慣病の四大要因は、脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満です。それらが血管を介して相互に作用すると突然死の原因になります。放っておくと必ずこの病気になる!と特定されている病気であり、無症状で進行していく病気です。進行していくと死につながるだけに、少なくとも数値だけは把握しておきましょう。

血圧や血糖値、脂質などが数値的には危険な範囲であっても、症状が出ないと危機感を抱くことが少ないというのが生活習慣病です。検査結果の数値異常には「症状は出ていませんが、数値上は生活習慣病の予備軍ですよ」という意味が含まれています。

◇血圧の基準値と、高血圧が多い日本人

血圧の許容範囲は日本人間ドック学会と日本高血圧学会によって異なっていましたが、147/94mmHg未満が訂正されて日本高血圧学会の「140/90mmHg未満」が世界的な標準値となっています。しかし、糖尿病の場合は血管に与えるダメージが大きくなるため、糖尿病の進行度に合わせて130/80mmHg以下のさらに低い血圧が求められます。

血圧に関しては日本人の食塩摂取量の多さが一つの原因になっています。現在の食塩摂取の平均値が10~11gと多すぎるのも問題です。日本高血圧学会では1日6g未満を推奨していますが、まだまだWHOが推奨する世界的な標準値の5gには届きません。

海に囲まれた日本とはいえ、世界的な平均値の2倍以上を摂取しているという理由ですが、日本では海水を塩化ナトリウムだけに精製しているのが高血圧の原因です。食塩を摂取している限り高血圧は進行していきます。そして、血圧が上がると心臓に負担がかかるだけでなく、血管にも同時に負担がかかります。柔軟性を失って動脈硬化になったり血栓が出来やすくなったり、出血を起こしやすくなります。

◇血糖値の基準値と、検診で見逃される隠れ糖尿病

こちらも許容範囲は日本人間ドック学会と日本糖尿病学会では基準値が異なっていますが、人間ドッグ学会の基準値を採用しています。

「空腹時血糖値は70~109mg/dLの範囲内」、「食後2時間血糖値は140mg/dL未満」に抑えましょう。空腹時血糖値が126mg/dL以上、または食後2時間血糖値が200mg/dLの場合は糖尿病の疑いがあります。1型糖尿病であれば厳密な血糖値コントロールが必要ですが、生活習慣の影響を受ける2型糖尿病の場合は過去1~2カ月の平均値HbA1cが指標になります。正常値は「4.3%~5.8%」です。

定期検診で行われる空腹時血糖値では、糖尿病の45%が発病を見逃されます。10年以上にわたって定期検診で異常が見つからないまま慢性の糖尿病になっている場合もあります。そのため、空腹時血糖値が100mg/dLを超えている場合は、念のために食後2時間血糖値の検査を受ける方が無難です。

ちなみに、糖を分解するインスリンが分泌されなくなる1型糖尿病は生活習慣病とは関係なく、主に肥満が原因となる2型糖尿病が生活習慣病の対象です。糖尿病も他と同じように初期症状はありません。

◇脂質の基準値と対策が難しい脂質異常症

4200万人以上にわたる患者数の脂質異常症は、中性脂肪とコレステロールの摂りすぎが原因ですが、体内に溜まっていくと数値を下げることは難しいものです。もし、中性脂肪やコレステロール値が高くなっても、急に運動を始めたりカロリーや脂質制限を始めることは考えにくく、下げるためにちょっとした努力が必要なので患者数も多くなっています。

中性脂肪(TG)50~149mg/dL
HDLコレステロール(HDL-C)40mg/dL以上
LDLコレステロール(LDL-C) 140mg/dL未満
総コレステロール(TC)220mg/dL未満(目安)

脂質異常症とは、脂質(食用油)やコレステロールの摂りすぎが原因で血管に悪影響を及ぼします。肝臓で作られた中性脂肪は血管を通って、筋肉や内臓などにエネルギーの元として運ばれています。中性脂肪値が高いと内臓脂肪や皮下脂肪が増えるだけでなく、動脈硬化や高血圧を起こしやすくなります。

コレステロール値が高いと血管壁に次第に溜まっていく事で、動脈硬化が進行してプラークと呼ばれる血管壁の隆起が次第に増えていきます。

◇その他の検査で把握できる基準値

数値で発病の可能性がわかるものとして、糖尿病のリスクを高める痛風の尿酸値(8mg/dL以上は危険)、関節リウマチのシュウ酸カルシウムなども定期的に検査を受けることで自分の体の状態がわかります。そして、尿酸値を下げるためにプリン体の摂取を控えることで防げる病気です。

ちなみに、痛風の4大合併症には、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、尿路結石があります。痛風と同じ原因物質の尿酸による尿路結石は、人が感じる痛みの中で最も大きなものです。モルヒネが切れたら痛みだけで吐き続けるほど酷いものです。

※ 次に簡単にできる予防法をご紹介します。    次のページへ

↑ PAGE TOP